NI伊藤憲武
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10分で聴くリーガルアップデート 第5回

生成AIプリンシプル・コードを読む(前編)自社は対象になるのか

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この回の要点

  • 法的拘束力はなく、コンプライ・オア・エクスプレインで運用される文書です(4ページ)。
  • 受託開発だけの会社や、自社データのみで特化させた社内向けシステムは、原則として対象外です(2〜3ページ)。
  • 受け入れるなら、コーポレートサイトでの公表と事務局への届出、年1回の見直しまでが一式です(5ページ)。

今日のテーマと要点

伊藤今日は、生成AIのプリンシプル・コードを読みます。正式には、生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード。内閣府の知的財産戦略推進事務局が担当している文書です。全部で14ページあります。

聞き手新しい法律ができた、という話ではないのですよね。

伊藤違います。1ページの冒頭に書いてあるとおり、2025年に成立したAI推進法、正式には人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律の趣旨を踏まえつつ、コーポレートガバナンスのスチュワードシップ・コードのような、コンプライ・オア・エクスプレインの手法を参考にして作られた文書です。

伊藤二回に分けます。前編の今日は、自社が対象になるのかどうか。後編で、対象になった場合に何を開示し、どう備えるかを扱います。

伊藤前編で押さえてほしいのは三つです。一つ目、この文書に法的拘束力はありません。4ページに明記されています。

伊藤二つ目、対象になるかどうかの線引きが、2ページから4ページにかなり細かく書かれています。ここを読まずに身構える必要はありません。

伊藤三つ目、受け入れると決めた場合にやることは、公表して終わりではありません。届出と、年1回の見直しまでが一式です。5ページです。

自社は「生成AI事業者」に当たるか

聞き手では二つ目から伺います。誰が対象なのでしょうか。

伊藤1ページの定義からいきます。この文書は、生成AI開発者と生成AI提供者、この二つを合わせた生成AI事業者に適用されます。

伊藤開発者は、生成AIシステムを構築して公衆に実質的に提供した者。提供者は、それをアプリケーションや製品、既存のシステムや業務プロセスに組み込んだサービスとして、公衆に提供した者です。

聞き手APIで他社のモデルを組み込んで、自社サービスとして出している会社は、提供者になりますね。

伊藤その理解でよいと思います。一方で、1ページから2ページにかけて、原則として含まれない人たちが列挙されています。

伊藤開発者から委託を受けて、モデルやアルゴリズムの開発、データ収集、前処理、学習や検証といった構築過程の一部だけを引き受けて納入する人。それから、提供者から委託を受けて、システムの検証や連携の実装、運用サポートの一部だけを引き受ける人。これらは原則として含まれません。

伊藤それから2ページに、公衆への提供を行っておらず、研究・開発を行っているにすぎない者は該当しない、とあります。受託開発だけの会社は、まず対象外から考えてよい。実質的に自分が公衆に提供したと評価できる場合は別、という留保は付いていますが、出発点はそうです。

社内向け、業界特化はどうなるか

聞き手よくある形として、顧客企業のデータだけを使って、その会社専用のシステムを作るケースがあります。

伊藤2ページのイに、まさにその場合が書かれています。一つの法人や個人が持っているデータだけを使って特化させた生成AIシステムを、そのデータ提供者か、指定された限られた範囲の人だけに提供する場合、開発者には含まれない、とされています。

伊藤3ページに具体例もあります。汎用サービスを提供する法人Aからライセンスを受けた法人Bが、法人Cのデータだけを使ってCの社内業務に特化させたものを作りCに提供する場合、法人Bは該当しない、という例です。

聞き手では、特定の業界向けに作る場合は。

伊藤3ページのウです。業界特化型は、該当し得る、とされています。ただし、同じページに大事な限定があって、その場合に対応が求められるのは、汎用的なサービスに自社が付加した部分に限られる、とされています。土台の部分は、元のモデルを出している会社が原則を守ることで透明性が図られる、という整理です。

伊藤もう一つ、3ページには除外があります。第三者の権利を侵害する生成物が生成されるおそれが著しく低いシステムやサービスは該当しない。例として、既存の著作物の創作的表現を直接感得できない生成物や、意思決定に資する統計的データ、推論結果にとどまる生成物が、極めて高い頻度で生成されるものが挙げられています。

聞き手需要予測や分類をするだけのAIなら、ここに入る余地がありそうですね。

伊藤可能性はありますが、出力の実態で見る必要があります。もう一点、4ページのエ。国内に本店や主たる事務所がない事業者でも、サービスが日本に向けて提供されていれば適用を受けます。海外の会社だから関係ない、とはなりません。

コンプライ・オア・エクスプレインという手法

聞き手対象だと分かったとして、この文書はどういう性格のものなのでしょうか。

伊藤4ページの(3)です。まず、生成AI事業者に帰属する機微な情報、つまり営業秘密や安全性・セキュリティに関するものの強制的な開示を求めるものではなく、法的拘束力を有する規範ではない、と明記されています。

伊藤そのうえで、原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する。これがコンプライ・オア・エクスプレインです。個別の事情に照らして実施することが適切でない原則があれば、実施しない理由を十分に説明することで、一部を実施しないことも想定されています。

聞き手説明すれば何でもよい、ということにはならないですよね。

伊藤同じ4ページに、説明を行う際には、利用者や権利者の理解が十分に得られるよう工夫すべきだ、と書かれています。それから、原則を実施しつつ、自らの具体的な取組を積極的に説明することも有益だ、とも。

伊藤5ページが受入れの作法です。受け入れる事業者に期待されるのは三つ。コーポレートサイト等で、各原則を受け入れる旨と、実施事項、実施しない原則があればその理由を公表すること。内閣府知的財産戦略推進事務局の様式で届け出ること。そして、各事項について原則として毎年、見直しと更新を行うこと。更新したときはその旨も公表する、とあります。

聞き手事務局は、届出の内容を審査するのでしょうか。

伊藤しません。5ページの最後に、事務局は届出の内容について審査を行うものではなく、第三者からの照会等にも回答しない、と書かれています。お墨付きをもらう制度ではない、ということです。届け出た事業者の一覧とリンクは公表される、という建て付けです。

前編のまとめ

伊藤まとめます。一つ目、まず自社が対象かどうかを、1ページから4ページで確認してください。受託開発だけ、社内データだけ、研究開発だけなら、原則として対象外です。

伊藤二つ目、業界特化型は該当し得ますが、求められるのは自社が付加した部分に限られます。土台の汎用モデルの部分は、そのモデルを出している会社の側の話です。

伊藤三つ目、日本に向けて提供していれば、海外の事業者でも適用を受けます。グループ会社が国外にある場合は、どこが提供者なのかを整理しておいてください。

聞き手後編では。

伊藤原則1の開示項目、原則2と原則3の開示の求め、そしてエクスプレインの作法を見ていきます。6ページから14ページです。

Sources

参考にした一次資料

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