NI伊藤憲武
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2026.09.18 景品表示法 / 広告表示 / ステルスマーケティング / 環境表示

景品表示法の最近の動向:措置命令から見る問題になりやすい広告

景品表示法については、法律そのものの改正だけでなく、消費者庁が公表する実態調査報告書や、実際の措置命令・確約手続・指導の動向を確認することが重要です。近年では、No.1表示、買取サービス、環境ラベルについて相次いで実態調査が行われ、2026年には「期間限定」の価格・条件訴求やSNS上のステルスマーケティングについても措置命令が行われています。

これらの事例から見えてくるのは、個々の文言が形式的に事実であるかだけでなく、広告全体から一般消費者がどのような印象を受けるのかを確認する必要があるという点です。本稿では、最近の消費者庁の調査・執行動向を踏まえ、特に問題になりやすい広告表示を整理します。

この記事のポイント

  • 環境表示では、「ECO」「グリーン」「再生素材使用」といった抽象的な訴求だけでなく、対象範囲・使用割合・削減率・裏付けの明確性が重要です。
  • No.1表示や「○%が推奨」といった表示は、調査会社の調査結果があるだけでは足りず、調査方法と表示内容の対応まで確認する必要があります。
  • 「今だけ」「○日まで」といった期間限定表示は、その期間だけ実際に有利な条件なのかを確認する必要があります。
  • SNS投稿については、投稿者への依頼・対価提供・投稿方針への関与がある場合、広告であることが一般消費者に明瞭に伝わっているかを確認する必要があります。

1 最近の景品表示法のアップデート

ここ数年、消費者庁は、広告実務で問題になりやすいテーマについて実態調査を相次いで公表しています。代表的なものとして、2024年9月の「No.1表示に関する実態調査報告書」、2025年4月の「買取サービスに関する実態調査報告書」、2026年8月の「環境ラベルに関する実態調査報告書」があります。

公表時期公表資料実務上のポイント
2024年9月No.1表示に関する実態調査比較対象、調査対象者、調査方法、表示との対応を確認
2025年4月買取サービスに関する実態調査買取価格、キャンペーン、比較表示等の実態を整理
2026年8月環境ラベルに関する実態調査対象範囲、使用割合、削減率、第三者認証、抽象的な環境訴求を整理

これらの実態調査報告書は、新しい禁止規定を創設するものではありません。しかし、消費者庁がどのような表示を問題として捉え、景品表示法上どのように考えているかを具体的に示す資料であり、広告審査の実務では重要な手掛かりになります。

また、令和7年度(2025年度)の景品表示法の運用状況を見ると、調査件数は454件、措置命令は13件、確約計画の認定は8件、指導は388件でした。公表される措置命令だけでなく、相当数の案件が指導によって処理されている点にも注意が必要です。消費者庁長官の会見では、令和6年度から開始したインターネット上の監視が、指導件数の増加の一因であると説明されています。

参考:消費者庁「実態調査」/消費者庁「令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組」

2 「ECO」「環境にやさしい」だけでは足りない――環境表示

2026年8月20日に公表された「環境ラベルに関する実態調査報告書」は、今後の広告実務に大きな影響を与えそうな資料です。消費者庁は、事業者ウェブサイトやECサイト等で使用されている環境ラベル139種類を収集し、事業者等へのヒアリングと一般消費者1,000名へのアンケートを行いました。

調査では、139種類のうち20種類について、環境配慮の対象が商品本体なのか、包装等なのか、全体なのかが明確ではないとされました。また、原材料等の環境配慮を訴求する62種類のうち29種類は、使用割合が具体的な数値で明確に表示されていませんでした。これに対し、アンケートでは73.0%の消費者が、使用割合は50%程度以上だと思うと回答しています。

さらに、139種類のうち59種類では、説明が併記されていないなど、何をもって環境に配慮しているのかが外形上明確ではないとされました。消費者庁は、「ECO」「グリーン」といった文字や自然をモチーフにしたイラストのみで構成され、具体的な環境配慮の内容が明確でない表示についても留意点を示しています。

実務で確認したいポイント

  • 環境配慮の対象は、商品本体、包装、製造工程などのどこなのか。
  • 再生素材・バイオマス素材等の使用割合はどの程度なのか。
  • 「プラスチック削減」等を訴求する場合、その削減率はどの程度なのか。
  • 環境上の効果について、表示内容と対応する実証データ等を保有しているか。
  • 自社独自のマークを、第三者認証であるかのように受け取られるデザインにしていないか。

例えば「再生素材使用」という表示自体が事実であっても、実際の使用範囲や割合が限定的であるのに、商品全体又は大部分に再生素材が使用されているとの印象を与える場合には、景品表示法上の問題が生じ得ます。環境訴求では、「何が」「どの程度」「どの範囲で」環境に配慮されているのかを具体化することが重要です。

参考:消費者庁「環境ラベルに関する実態調査報告書(概要)」

3 「顧客満足度No.1」「医師の○%が推奨」は調査方法まで確認する

No.1表示については、2024年9月に消費者庁が実態調査報告書を公表しています。報告書では、主観的評価によるNo.1表示の根拠となる調査について、少なくとも、①比較する商品・サービスが適切に選定されていること、②調査対象者が適切に選定されていること、③調査が公平な方法で実施されていること、④表示内容と調査結果が適切に対応していること、が必要であるとの考え方が示されています。

したがって、調査会社から「No.1」という結果を受け取ったという事実だけで安心することはできません。例えば、「顧客満足度No.1」と表示するのに、実際の利用者ではなく、ウェブサイトの印象だけを見た回答者を中心に調査している場合には、表示内容と調査方法が対応しているかが問題になります。

同報告書の事業者ヒアリングでは、広告主の多くが、アンケートの質問項目や比較対象となる競合商品など、根拠調査の基本的な内容を把握していなかったことも報告されています。調査会社・コンサルティング会社に依頼する場合でも、広告主自身が根拠資料と調査設計を確認する必要があります。

参考:消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書(概要)」

4 「今だけ」「○日まで」――期間限定表示は本当に期間限定か

2026年6月11日、消費者庁は、スマートフォン・タブレットの買取サービスについて、「買取金額10%UP キャンペーン実施中!」「○月○日まで」などと表示していた株式会社ゲオストアに対し、有利誤認表示に当たるとして措置命令を行いました。

消費者庁によれば、表示からは、期限内に申し込んだ場合に限り、その期限後よりも有利な割増率で買取サービスを受けられるかのように受け取られるものでした。しかし実際には、期限後に申し込んだ場合でも、期限内と同じ、又はそれ以上に有利な割増率で買取サービスを受けられるものでした。

この事例から分かるのは、キャンペーン期間自体を記載していればよいわけではないということです。「今だけ」「本日限り」「○日まで」「キャンペーン期間中がおすすめ」といった表示は、通常時より有利な条件がその期間に限定されているとの印象を与えます。キャンペーンを繰り返し延長する場合や、終了後も同等以上の条件が恒常的に提供される場合には、その表示が実態に合っているかを改めて確認する必要があります。

参考:消費者庁「株式会社ゲオストアに対する景品表示法に基づく措置命令について」

5 広告に見えないSNS投稿――ステルスマーケティング

SNSを活用したマーケティングでは、広告であることが分かりにくい投稿にも引き続き注意が必要です。2026年8月6日には、画像加工アプリ「SNOW」の利用サービスの提供事業者2社に対し、ステルスマーケティング告示に該当するとして措置命令が行われました。

公表資料によれば、SNOW Japanは第三者に対し、対価の提供を条件として、SNOW Japanが指示する方針に沿ったXへの投稿を依頼していました。消費者庁は、事業者が当該第三者に依頼した投稿であることが明らかにされておらず、表示内容全体からも一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっていないと判断しています。

ステマ規制では、典型的なインフルエンサー広告だけを見るのでは不十分です。商品提供・謝礼・ポイント付与等を伴う投稿、アンバサダー施策、一般ユーザー風の投稿、従業員や関係者による投稿などについても、事業者が表示内容の決定に関与しているか、一般消費者が広告であることを明瞭に認識できるかを確認する必要があります。

「PR」「広告」等の表示を付ける場合も、投稿の末尾や大量のハッシュタグの中に埋もれさせるのではなく、消費者が容易に認識できる位置・方法で示すことが重要です。

参考:消費者庁「『SNOW』と称するアプリケーションの利用サービスの提供事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について」

6 「○○の効果」「最大○○」――効果・性能表示は根拠を先に確認する

商品の効果・性能を具体的に訴求する場合には、不実証広告規制にも注意が必要です。2026年4月には、尿失禁対策用の下着について、あたかも100cc又は200ccまでの尿であれば商品の外側に漏れ出さない効果が得られるかのような表示をしていた2社に対し、優良誤認表示として措置命令が行われました。

一方の事業者が提出した資料については、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められず、もう一方の事業者は定められた期間内に資料を提出しなかったとされています。

不実証広告規制のポイントは、問題を指摘されてから説明を考えるのではなく、表示を行う時点で、その表示内容に対応する合理的な根拠を有しておくことです。試験データが存在していても、試験条件や測定対象が実際の広告表現と対応していなければ、十分な根拠とは評価されない可能性があります。生成AIの機能について「100%正確」「業界最高精度」といった訴求を行う場合も同様で、この点は生成AIサービスの法務チェックリストでも整理しています。

参考:消費者庁「尿失禁対策用の下着販売事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について」/不実証広告規制に関する指針

7 広告を出す前の実務チェックリスト

最近の調査報告書・措置命令を踏まえると、広告審査では、表示されている一文だけではなく、画像、注記、価格、期間、SNS上での見え方などを含めて「広告全体から一般消費者がどう受け取るか」を確認することが重要です。

チェック項目確認内容
広告全体の印象強調表示、画像、注記を含め、消費者がどのような内容だと理解するか。
根拠資料効果・性能・比較・No.1等の表示について、表示前から根拠資料を保有しているか。
調査方法No.1・満足度・推奨率等について、対象者、比較対象、質問方法が表示内容と対応しているか。
限定性「今だけ」「○日まで」等の表示について、本当に当該期間だけ有利なのか。
環境訴求環境配慮の対象、割合、削減率、根拠、認証主体が明確か。
PR表示依頼投稿や対価・商品提供を伴う投稿について、広告であることが明瞭に分かるか。
打消し・注記重要な条件を小さな文字や離れた場所の注記だけで補おうとしていないか。
更新時の再確認キャンペーン延長、LP改修、SNS転載等の際に、当初の法務レビューから前提が変わっていないか。

なお、有料プランやサブスクリプションをオンラインで販売する場合には、特定商取引法の通信販売規制による最終確認画面の表示義務も重ねて適用されます。

8 まとめ

最近の景品表示法の動向を見ると、問題になりやすい広告には共通点があります。それは、表示されている個々の文言が形式的には事実であっても、広告全体から一般消費者が受ける印象と実態との間にズレが生じているケースです。

例えば、「再生素材使用」という表示自体が事実でも、使用範囲や割合がごく一部であるのに商品全体に広く使用されていると受け取られるのであれば問題となり得ます。「期間限定」という表示も、その期間だけ特別に有利でなければ、実態とのズレが生じます。また、調査会社によるNo.1調査や、インフルエンサーへの投稿依頼も、それだけで景品表示法上の問題が解消されるわけではありません。

新しいサービスやキャンペーンを立ち上げる際には、「この文言は事実か」という確認だけではなく、画面・画像・注記・価格・表示期間・投稿方法を含めた広告全体として、一般消費者にどのような印象を与えるかという観点から確認することが重要です。

主な参考資料

  • 消費者庁「実態調査」
  • 消費者庁「環境ラベルに関する実態調査報告書(概要)」
  • 消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書(概要)」
  • 消費者庁「株式会社ゲオストアに対する景品表示法に基づく措置命令について」
  • 消費者庁「『SNOW』と称するアプリケーションの利用サービスの提供事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について」
  • 消費者庁「尿失禁対策用の下着販売事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について」
  • 消費者庁「令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組」

広告・表示に関する各省庁の指針・告示は、景品表示法・広告表示のガイドライン一覧にまとめています。分野を横断して探す場合は、業種と業務内容の二軸で絞り込める索引(収録343件)をご利用ください。


※本稿は2026年9月時点の公表資料を基に一般的な考え方を整理したものです。個別の広告表示については、商品・サービスの内容、表示媒体、表示全体の構成その他の事情を踏まえた検討が必要です。広告審査やキャンペーン設計のご相談は、お問い合わせフォームから承ります。

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