共同開発の知的財産権は誰のものか
スタートアップが大企業や大学、他のスタートアップと共同して、新しい製品やサービスを開発することは珍しくありません。共同開発では、一方が技術を持ち、他方が資金、設備、顧客基盤、データなどを提供することで、単独では実現できない事業を立ち上げられる可能性があります。その反面、実務上もっとも難しい問題の一つが、共同開発によって生まれた知的財産を誰のものにするのかという問題です。
この記事のポイント
- 共同開発では、「共同で作ったから共有」という発想だけでは足りません。
- 近年の政府ガイドラインは、知財の帰属、利用権、独占範囲、対価、改良発明、Exitへの影響まで分解して設計することを重視しています。
- 特に2026年6月の新しい知財取引指針は、「名ばかり共同研究」や共有知財の不利な取扱いまで具体的に問題化しています。
「共同で開発したのだから、特許も50%ずつ共有すれば公平ではないか」と考えたくなります。しかし、近年公表されている政府のガイドラインやモデル契約書を見ると、むしろこのような「とりあえず共有」という考え方から離れ、知的財産権の帰属、利用権、事業領域、対価、独占期間などを分解して設計することが重視されています。
特に令和8年(2026年)6月24日、公正取引委員会、中小企業庁及び特許庁は、新たに「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」(以下「知財取引指針」といいます。)を公表しました。同指針は、特許等だけでなくノウハウやデータまで含め、共同研究開発における一方的な権利帰属、「名ばかり共同研究」、成果物の利用制限、最恵待遇条件、共有知的財産権の不利な取扱いなどを具体的に取り上げています。
本稿では、これまでの経済産業省・文部科学省・特許庁・公正取引委員会のガイドライン等の流れを踏まえながら、スタートアップが共同研究・共同開発を行う際に、知的財産権をどのように設計すべきかを考えます。
1 共同開発をめぐるルールは「知財の帰属」から「事業価値の配分」へ
共同研究開発については、以前から様々な政府文書が公表されています。
産学連携については、文部科学省・経済産業省が平成28年(2016年)に「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を策定し、令和2年(2020年)には追補版を公表しました。そこでは、大学と企業を対等なパートナーとして位置付け、大学の「知」を単なるコストではなく価値として評価する考え方などが示されています。
また、スタートアップと事業会社との連携については、特許庁が秘密保持契約、PoC契約、共同研究開発契約、ライセンス契約等について「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書」(OIモデル契約書)を公表しています。現在の最新版は令和7年(2025年)4月改訂のver2.2です。新素材編だけでなくAI編、大学編も用意されています。
さらに、公正取引委員会と経済産業省は、「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」において、NDA、PoC、共同研究、ライセンス等について、実際の取引で生じている問題と独占禁止法上の考え方を整理しています。現行版は令和8年(2026年)2月19日改正です。
そして令和8年6月には、対象をスタートアップに限定せず、知的財産権・ノウハウ・データの取引全般を横断的に取り扱う前記の「知財取引指針」が新たに策定されました。同指針には共同開発契約書のひな形まで添付されています。
この流れから読み取れるのは、共同開発における知財問題を、「成果物は甲か乙か、それとも共有か」という形式的な帰属問題だけで考えるのでは足りないということです。
現在の実務では、誰が何を持ち込み、誰が何に貢献し、誰がどの市場で成果を利用し、その結果生まれる事業価値をどのように配分するのか、というところまで考えて契約を設計する必要があります。
2 そもそも「共同開発」と「共同発明」は同じではない
最初に区別しておきたいのが、契約上「共同研究」「共同開発」と呼んでいることと、特許法上の「共同発明」であることは別の問題だという点です。
共同研究契約を締結していても、一方当事者しか発明の完成に実質的に関与していなければ、その発明が当然に共同発明になるわけではありません。
知財取引指針も、発明が共同でなされた場合には、発明を成立させるために実質的に協力した者が共同発明者となるという考え方を前提としています。そして、いわゆる「名ばかり共同研究」の場合に、研究費を負担したというだけで成果に係る知的財産権を取得することが当然に正当化されるものではない、と明確に整理しています。
例えば、スタートアップがコア技術を保有し、実際の研究開発もほぼスタートアップが行い、大企業は研究費と試験環境を提供するという案件があったとします。大企業側が費用を負担しているからといって、「共同開発なので、開発された特許はすべて50%ずつ共有とする」ことが当然に合理的とは限りません。
知財取引指針は、共同研究開発費を負担していることが直ちに成果である知的財産権の帰属を正当化するものではなく、発明者ではない者が知的財産権を取得するのであれば、成果創出への貢献度等を踏まえ、通常は別途それに見合った対価が必要になるという考え方を示しています。
したがって、「研究開発費」と「知財を取得する対価」は、本来別のものとして考える必要があります。
3 最初に整理すべきなのは「バックグラウンド知財」である
共同開発契約というと、将来生まれる成果物の帰属ばかりに目が行きがちです。しかし、スタートアップにとってそれ以上に重要なのが、共同開発を始める前から自社が持っている技術・ノウハウ等を明確にすることです。
例えばスタートアップが、既存のアルゴリズム、ソースコード、学習済みモデル、製造方法、実験データ、設計図、顧客データ、技術上のノウハウ等を持っていたとします。
これらを共同開発の中で利用した結果、共同開発前から存在していた技術と、新しく生まれた成果との境界が分からなくなることがあります。
知財取引指針は、この問題を「コンタミネーションリスク」として取り上げています。本来スタートアップが単独で保有できた技術が、共同研究の成果物と扱われ、共有特許や相手方単独の特許になってしまう危険があるためです。
そこで同指針では、共同研究開発開始時点のバックグラウンド情報をリスト化して交換することや、プロセスノウハウ、データ、ソースコードなどについて、タイムスタンプ等を利用して契約締結前から保有していたことを証拠化することなどを提案しています。
スタートアップ側では、Background IP(既存知財)、Foreground IP(共同開発から生じる成果)、共同開発後に生じる改良技術を区別できるようにしておくべきです。特にコア技術を共同開発契約の「成果物」の定義に飲み込まれないようにすることが重要です。
4 「とりあえず共有」がスタートアップに不利になり得る理由
共同で開発した成果について、「どちらか一方のものにするのは不公平なので、共有にしましょう」という解決が採られることがあります。一見すると公平です。
しかし、スタートアップにとって知的財産権の共有は、必ずしも中立的な解決ではありません。
特許法73条では、共有特許について、各共有者は契約で別段の定めがない限り自ら実施することができます。一方で、第三者に通常実施権を許諾する場合や、特許権の持分を第三者に譲渡する場合には、原則として他の共有者の同意が必要です。
大企業が自社工場で特許発明を実施するビジネスであれば、共有特許でも大きな問題が起きないことがあります。しかし、スタートアップは、製造を他社に委託する、他社へライセンスして市場を広げる、他業界へ横展開する、海外企業と提携する、知財を含む事業を売却する、といった方法で成長することが多くあります。
そのたびに共有者の同意が必要となれば、事業会社が事実上の拒否権を持つことになります。OIモデル契約書も、この点を指摘し、共有特許が第三者への製造・量産委託やライセンス、さらにはM&Aの障害となり得ることを解説しています。
したがって、「共同で開発したから共有」という結論を先に置くのではなく、誰が知財を持つことが、その技術を最も事業化しやすいのか、から逆算して考える必要があります。
5 知財の「所有」と「利用」を分けて考える
そこで近年のOIモデル契約書やスタートアップ指針が示している重要な考え方が、知的財産権の帰属と、事業上の利用権を分けるというものです。
例えば、特許権そのものはスタートアップに単独帰属させる一方、大企業には「自動車分野において5年間」といった限定された範囲で独占的な利用権を与える、という設計です。
スタートアップとの事業連携に関する指針でも、十分な検討をしないまま共同発明を「とりあえず共有」にすると、スタートアップが他用途・他分野で知財を利用するたびに相手方の承諾を得る必要が生じ、自由な事業展開が妨げられることを指摘しています。
その上で、スタートアップに知的財産権を帰属させ、連携事業者には事業領域や期間等を限定した独占的利用権を設定するという方法を一つの解決策として提示しています。
例えば、権利者をスタートアップとした上で、自動車業界ではA社が5年間独占利用、医療業界ではスタートアップが自由に展開、製造業一般では非独占、海外市場については双方協議、といった形で切り分けることができます。
「権利を誰が持つか」と「誰がどこで使えるか」を一つの問題として処理する必要はありません。
6 独占権を与えるなら「範囲」と「期間」を切る
もっとも、事業会社側にも合理的な利益があります。多額の研究費を負担し、顧客データや設備を提供して共同開発したにもかかわらず、完成直後に同じ技術を競合企業へ提供されてしまえば、共同開発を行うインセンティブが失われます。
したがって、一定の独占性を設定すること自体が問題なのではありません。重要なのは、どの市場について、どの地域について、どの競合企業について、何年間、何を禁止するのかを絞り込むことです。
例えば、「甲は、本契約終了後10年間、乙以外の第三者に本成果を利用したサービスを提供してはならない」とするのと、「甲は、本サービスの商用提供開始後2年間、日本国内の○○業界において、別紙記載の乙の直接競合企業に対し、本成果を利用したサービスを提供しない」とするのでは、スタートアップに与える影響がまったく異なります。
2026年の知財取引指針も、成果の秘密性を維持するために必要な合理的な期間・範囲の販売先制限は原則として問題にならない一方、合理的な期間・範囲を超える制限は、優越的地位の濫用や、場合によっては排他条件付取引・拘束条件付取引として問題となる可能性があるとしています。
7 「改良発明は全部相手に渡す」という条項にも注意する
共同開発契約では、「本成果を改良して生じた発明についても相手方に帰属する」といった条項が置かれることがあります。
この種の条項は、スタートアップにとって非常に大きな意味を持ちます。現在のサービスを少し改善しただけで、その後何年間にもわたって生じる技術まで共同開発先に取り込まれる可能性があるためです。
公正取引委員会の「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」は、共同研究開発の成果の改良発明等について、他の参加者への非独占的な実施許諾義務を課すことは原則として問題とならないとする一方、改良発明を相手方へ譲渡する義務又は独占的に実施許諾する義務を課すことは、研究開発のインセンティブを減殺するものとして、不公正な取引方法に該当するおそれが強い事項に位置付けています。
したがって、「改良発明」という言葉を安易に広く定義するのではなく、誰が行った改良か、共同研究期間内か期間後か、相手方の秘密情報を使用したか、共同研究テーマとの関連性、独占ライセンスなのか非独占なのかを区別する必要があります。
8 2026年の新指針が「名ばかり共同研究」を明示した意味
2026年の知財取引指針で特に興味深いのは、実際の取引事例がかなり具体的に記載されていることです。
例えば、共同研究開発とされているものの、実際には一方の事業者がほぼ全てのノウハウ・技術を提供しているにもかかわらず、相手方から特許を50%ずつ共有するよう求められた事例が紹介されています。
また、PoCにおいて既存特許を応用し、実質的に一方当事者が成果物を全て製作したにもかかわらず、「資金を提供した」という理由で相手方から全権利の譲渡を求められた事例も紹介されています。
ここから分かるのは、「共同研究」という契約名称ではなく、実際に誰が何を提供し、何を創出したのかを見るという姿勢です。
特にスタートアップ側では、「大企業から開発費をもらっているのだから、知財を渡すのは仕方がない」と考えてしまいがちです。しかし、開発作業の対価、知的財産そのものを取得する対価、独占権を取得する対価は、本来それぞれ別に考えることができます。共同開発に際しては、この「対価の分解」が重要になります。
9 2026年の新指針は「共有にした後」の不公平まで見ている
今回の知財取引指針には、さらに興味深い項目があります。「共有知的財産権の不利な取扱い」です。
形式上は50%ずつの共有特許であっても、一方だけが実際にその特許を使って事業を行い、他方には実施を認めないというのであれば、実質的には対等とはいえません。
同指針は、共同研究開発の成果が共有特許となったにもかかわらず、一方のみが特許権を実施し、他方が実施できない場合を取り上げ、一方的に実施制限を求める行為について優越的地位の濫用の問題となり得ることを示しています。
つまり、「権利割合が50:50だから公平」ではありません。重要なのは、誰が実施できるのか、誰がライセンスできるのか、誰が事業化できるのか、誰が経済的利益を得られるのかです。共同開発契約を見る際には、持分割合だけでなく、権利を実際に使える状態になっているかまで確認する必要があります。
10 AI・ソフトウェアの共同開発では「知財」の対象そのものが複雑になる
AI・ソフトウェア分野では、共同開発により生まれる価値が特許だけとは限りません。
例えば生成AI・機械学習サービスであれば、元データ、前処理済みデータ、学習用データセット、ソースコード、アルゴリズム、プロンプト、モデル、モデルパラメータ、学習済みモデル、評価手法、実験結果、運用によって取得されるデータ、開発過程で得たノウハウなどが存在します。
2026年の知財取引指針が、特許や著作権だけではなく「ノウハウ・データ」を明示的に対象としているのも、このような現在の事業環境を反映したものといえます。同指針における「データ」には、研究開発における実験データ、産業データ、CADデータ、顧客データ、営業・マーケティングデータ等も広く含まれています。
AI分野ではさらに、独占が合理的なのか自体を検討する必要があります。公取委・経産省のスタートアップ指針は、複数企業からデータ提供を受けてカスタマイズモデルを作成し、それを複数企業に提供するタイプのAIビジネスでは、個々の事業会社ごとに成果物を独占させることは、スタートアップだけでなく事業会社にとっても非合理的になり得ると指摘しています。
非独占とすることでスタートアップが他社へ展開でき、その結果サービスコストを低減できる一方、共同開発に貢献した企業については利用料を優遇するなどの方法で利益調整をすることが考えられます。ここでも、「所有権を渡すか否か」ではなく、「どの経済的利益をどのように与えるか」という設計が重要になります。
11 共同開発契約は資金調達・M&Aにも影響する
スタートアップでは、共同開発契約を締結するときだけを見てはいけません。将来の資金調達、業務提携、ライセンス、事業譲渡、M&Aまで想定する必要があります。
例えば、コア特許が大企業との共有になっており、その持分譲渡に相手方の同意が必要であれば、M&Aのデューデリジェンスで問題になります。
重要な技術について、「競合他社には永続的にライセンスしてはいけない」という契約が存在すれば、買収候補者が限定される可能性もあります。
特許庁が令和7年4月にOIモデル契約書をver2.2へ改訂した際にも、ディープテック・スタートアップのM&Aを阻害する可能性のある条項や解説を見直し、M&Aを選択しやすくすることが改訂理由の一つとされています。
つまり、共同開発契約は単なる「研究プロジェクトの契約」ではありません。スタートアップの将来の企業価値に直接影響する契約です。
12 独占禁止法上は「共同研究自体」と「共同研究に伴う制限」を分ける
ここで、公正取引委員会の古くからの「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」も重要です。なお、この指針自体は最近制定されたものではなく、平成5年(1993年)制定、直近の改定は平成29年(2017年)です。
同指針はまず、共同研究開発そのものについて、研究開発コストの削減、リスク分散、期間短縮、異分野の技術の相互補完などにより、一般的には競争促進的な効果を持つと評価しています。
一方で、競争関係にある事業者同士による共同研究などの場合には、研究開発競争そのものを減らす可能性があります。例えば製品市場で競争関係にある事業者による製品改良・代替製品の共同研究について、参加者の市場シェア合計が20%以下の場合には、通常、独占禁止法上問題とならないという一応の目安も示されています。
さらに重要なのが、共同研究自体は問題なくても、それに付随する契約条件が問題となり得るという点です。
同指針では、例えば共同研究期間中、同一テーマについて第三者との研究を制限することや、必要な範囲で秘密情報の目的外利用を禁止することなどは一定の場合には合理的とされています。
一方、共同研究と関係のない研究テーマまで禁止する、共同研究終了後も同一テーマの研究開発を広く禁止する、既存技術を自ら利用することまで禁止する、成果を利用した研究開発を禁止する、改良発明を相手方へ譲渡させる、改良発明を相手方へ独占的にライセンスさせる、成果を利用した製品の第三者への販売価格を拘束する、といった条件については、独占禁止法上の問題が生じる可能性が高いものとして整理されています。
共同開発契約では、「知財の帰属条項」だけではなく、その周辺にある競業避止、独占、取引先制限、改良技術、販売条件まで確認する必要があります。
13 スタートアップが共同開発契約で確認すべき事項
以上を踏まえると、共同研究・共同開発契約を締結するときには、少なくとも次の事項を整理しておく必要があります。
| 項目 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 共同開発の目的 | 何を開発し、何を事業化するのか |
| 役割分担 | 技術、人員、費用、設備、データ等を誰が提供するか |
| Background IP | 契約前から保有する技術・ノウハウ・データは何か |
| Foreground IP | 共同開発から生まれた成果をどう定義するか |
| 発明者 | 実際に誰が発明に貢献したか |
| 知財の帰属 | 単独帰属、共有、分野別帰属等のどれにするか |
| 利用権 | 権利を保有しない側がどの範囲で利用できるか |
| 独占性 | 分野・地域・顧客・期間をどこまで限定するか |
| 対価 | 開発費と知財取得・独占利用の対価を区別しているか |
| 改良技術 | 契約終了後の改良発明まで拘束していないか |
| 第三者ライセンス | 誰がどの条件でライセンスできるか |
| 出願 | 出願主体、費用負担、外国出願、権利維持の方針 |
| 権利行使 | 第三者の侵害に誰が対応するか |
| データ | 元データ・生成データの利用範囲はどうするか |
| ソフトウェア | ソースコード、OSS、著作権等をどう扱うか |
| 秘密保持 | 開示情報・成果・ノウハウの秘密性をどう維持するか |
| 公表 | プレスリリース、論文、学会発表等をどう扱うか |
| 競業・取引先制限 | 必要以上にスタートアップの事業を拘束していないか |
| 契約終了 | 終了後に成果・知財・データをどう利用できるか |
| Exit | 資金調達、事業譲渡、M&Aを阻害しないか |
ポイントは、これらを個別に交渉することです。「知的財産権は双方共有とする」という一文だけでは、共同開発後の事業関係はほとんど設計できません。
14 まとめ――共同開発契約は「知財を分ける契約」ではなく「将来の事業を設計する契約」である
近年の政府ガイドラインを見ると、共同研究・共同開発契約に関する考え方はかなり明確になってきています。
特に重要なのは、①研究費を負担したことと知的財産権の取得は同じではない、②「共同研究」という名前だけで共同発明・共有になるわけではない、③既存技術と共同開発成果を明確に区別する、④「とりあえず共有」が必ずしも公平ではない、⑤知財の所有と利用を分けて設計する、⑥独占権は分野・地域・期間などを限定する、⑦改良発明や共同開発後の事業活動まで過度に拘束しない、という点です。
2026年の知財取引指針が、「知的財産権の一方的帰属」だけでなく、「名ばかり共同研究」「成果物の利用制限」「最恵待遇条件」「共有知的財産権の不利な取扱い」まで具体的に取り上げたことは象徴的です。
共同開発契約では、契約締結時点では誰も成果が生まれるか分かりません。そのため、「誰が成果を持つべきか」を完全に予測して決めることは困難です。
だからこそ重要なのは、誰がどのような貢献をした場合に、どのような権利と経済的利益を得るのかというルールをあらかじめ設計しておくことです。
特にスタートアップにとって知的財産は、現在の商品のためだけに存在するものではありません。次の事業、次の資金調達、他業界への展開、そしてM&Aの際にも企業価値を構成する重要な資産です。
共同開発を成功させるためには、単に「知財を守る」という発想ではなく、共同開発によって生まれた知財をどのように社会実装し、双方がその価値を享受できる状態を作るかという視点から契約を設計することが重要です。
主な参考資料
- 公正取引委員会・中小企業庁・特許庁「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」(令和8年6月24日)
- 公正取引委員会・経済産業省「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」(令和4年3月31日、令和8年2月19日改正)
- 公正取引委員会「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」
- 特許庁「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書 ver2.2」
- 文部科学省・経済産業省「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン【追補版】」
知的財産に関する官庁のガイドライン・指針は知的財産のガイドライン一覧に、分野を横断して探す場合は業種と業務内容の二軸で絞り込める索引にまとめています。
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