NI伊藤憲武
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2026.10.25 景品表示法 / ステルスマーケティング / SNS広告 / 措置命令

ステマ規制はどこまで及ぶ?2026年の措置命令から見るSNS広告実務

この記事のポイント

  • ステマ規制で問題となるのは「インフルエンサーに金銭を払ったか」だけではなく、広告主が投稿内容の決定に関与したと評価されるかです。
  • SNOW事件では、対価を条件に投稿を依頼し、広告主が指示する方針に沿った投稿が行われたことが重視されました。
  • giobai事件は、依頼したInstagram投稿を広告主が自社サイトの「User’s Voice」として抜粋・再利用する場面でも、広告であることを明瞭にする必要があることを示しています。
  • 景表法対応はSNS投稿時だけでなく、広告代理店への発注、インフルエンサー管理、投稿の二次利用、効果表示の裏付けまで一つのフローで管理する必要があります。

2023年10月にステルスマーケティング告示が施行されて以降、インフルエンサー広告では「PR」と表示することが広く定着しました。しかし、実務では、単に「PRと書けばよい」という問題ではありません。

2026年8月、消費者庁は「SNOW」のサービス提供事業者2社に対し、X上の投稿についてステマ告示違反として措置命令を行いました。さらに同年10月には、株式会社giobaiに対し、自社サイト上の表示について、優良誤認とステマ告示違反の双方を理由とする措置命令を行いました。

この二つを見ると、規制の射程がかなり具体的に見えてきます。特にgiobai事件は、インフルエンサー本人の投稿だけでなく、その投稿を広告主が自社サイトで「お客様の声」のように二次利用する場合にも注意が必要であることを示しています。

1 ステマ規制の基本―二つの要件を見る

ステマ告示で問題となるのは、概ね①その表示が「事業者の表示」であり、②一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である場合です。

インフルエンサーが自発的に好きな商品を紹介しただけであれば、通常は事業者の表示ではありません。一方、広告主が投稿内容の決定に関与したと評価されれば、第三者名義の投稿でも事業者の表示となり得ます。

消費者庁Q&Aも、明示的な投稿文言の指示がなくても、事業者と投稿者とのやり取り、対価、無償提供の目的、過去・将来の取引関係等を踏まえ、投稿が投稿者の自主的意思によるものかを判断するとしています。

2 SNOW事件―「投稿依頼+対価+方針指示」

2026年8月6日のSNOW事件では、SNOW Japanが第三者に対し、対価の提供を条件として、X上でSNOW Japanが指示する方針に沿った投稿をするよう依頼していました。消費者庁は、この事情からSNOW CorporationとSNOW Japanが表示内容の決定に関与し、当該投稿を「事業者の表示」と認定しました。

そして投稿には、SNOW Japanから依頼された投稿であることが明らかにされておらず、表示内容全体を見ても一般消費者にとって広告であることが明瞭ではないとして、ステマ告示違反と判断されました。

ここで重要なのは、「広告主が投稿文章を一字一句書いたか」ではない点です。一定の対価関係のもと、広告主が方針を示して投稿を依頼し、表示内容の決定に関与していると評価されれば、事業者の表示になり得ます。

3 「PR」の文字がなければ必ず違反なのか

告示は「PR」という特定の文字列を必須とするものではありません。消費者庁Q&Aでは、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」のほか、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった説明も例示されています。重要なのは、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭かどうかです。

逆に、「PR」と書いていても、それが非常に見つけにくい位置にあったり、投稿本文ではなくリプライだけに記載されているなど、一般消費者が気付かない場合には十分でない可能性があります。動画についても、冒頭だけの表示では途中から視聴する者に伝わらないことがあり、表示全体を通じた明瞭性が問題になります。

4 無償提供だけでも「事業者の表示」になることがある

金銭報酬がなければステマ規制の対象外、という理解も危険です。商品を無償提供した場合でも、特定のインフルエンサーを選び、投稿を依頼し、その後の取引可能性等を含めた関係性がある場合、投稿者の自主的意思による表示ではないと評価されることがあります。

一方、不特定多数の人に街頭で試供品を配り、「よければ感想を投稿してください」と声を掛けるだけなら、通常は表示内容の決定に関与したとは評価されにくいとされています。つまり、金銭の有無ではなく、広告主と投稿者の具体的な関係を見る必要があります。

5 giobai事件―インフルエンサー投稿を自社サイトに再掲載しても問題になる

2026年10月20日のgiobai事件は、もう一段実務的な論点を示しています。giobaiは、商品を無償提供し、さらに対価の提供を条件として第三者にInstagram投稿を依頼していました。その第三者の投稿を一部抜粋し、自社ウェブサイト上で「User’s Voice SNSでも大人気」等として掲載していました。

消費者庁は、この自社ウェブサイト上の表示についても、第三者への依頼に基づく投稿を素材とした事業者の表示であるのに、その依頼関係が明らかにされておらず、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認定しました。

これは「インフルエンサー本人の投稿にPR表示があるか」だけを管理していても不十分であることを意味します。広告主がその投稿をLP、ECサイト、広告バナー、営業資料等に転載・抜粋する場合、元の投稿が広告として作られたものであることを隠したまま「ユーザーの声」として見せることが問題になり得ます。

6 消費者庁Q&Aも「お客様の声」への二次利用を明示的に注意している

消費者庁のステマQ&Aでは、事業者の表示に当たるインフルエンサー投稿を「お客様の声」として自社ウェブサイトに掲載することは適当ではないとされ、掲載する場合には、自社が依頼したインフルエンサーの投稿であることが明瞭になる形で表示する必要があるとされています。

giobai事件は、このQ&A上の注意点が実際の執行場面でも重要になることを示す事例といえます。SNS広告のコンプライアンス担当者は、投稿時のチェックだけでなく、マーケティング部門がその素材を後からどこに使うかまで把握する必要があります。

7 giobai事件では優良誤認も同時に問題になった

giobai事件では、ステマ表示だけではなく、商品の除菌・ダニ等に関する効果表示についても優良誤認が認定されています。消費者庁は景品表示法7条2項に基づき合理的根拠資料の提出を求めましたが、提出資料は表示の裏付けとなる合理的根拠を示すものとは認められなかったとされています。

この点はSNS広告実務で重要です。広告であることを明示すれば、投稿内容そのものの景表法チェックが不要になるわけではありません。「PR」と明示した上で、根拠のない効果をうたえば、別途優良誤認の問題になります。

8 広告代理店やインフルエンサーに任せれば広告主は責任を免れるか

ステマ告示に基づく景品表示法上の規制対象は、基本的に商品・サービスを供給する事業者、すなわち広告主です。インフルエンサーや制作会社に運用を外注したからといって、広告主の管理責任がなくなるわけではありません。

したがって契約実務でも、広告代理店・インフルエンサーとの契約に、景表法その他広告規制の遵守、広告表示の方法、事前確認、投稿記録の保存、二次利用時の条件、違反発覚時の修正・削除協力等を入れておく意味があります。

9 企業がSNS広告で整備したいチェックフロー

私は、SNS広告の管理では「投稿ごとにPR表記を確認する」だけでなく、次の流れを一つのプロセスとして持つ方がよいと思います。

  • インフルエンサー選定時に、対価・無償提供・過去の関係を記録する。
  • 投稿依頼時に、広告主がどこまで内容・表現・投稿時期等を指示するか記録する。
  • 投稿案について、広告であることの明瞭性と、商品性能等の表示根拠を別々に確認する。
  • 公開後、表示が消されていないか、プラットフォーム仕様変更で見えにくくなっていないか確認する。
  • 投稿を自社サイト・LP・広告・営業資料に二次利用する場合、元の依頼関係が消費者に分かる表示になっているか再確認する。
  • 広告代理店・制作会社に任せる場合も、依頼内容・チェック記録を広告主側で保持する。

10 まとめ

2026年のSNOW・giobaiの措置命令を見ると、ステマ規制は「#PRを付けるか」という形式論だけではありません。広告主が投稿内容の決定にどの程度関与したか、消費者が表示全体から広告だと理解できるか、さらにその投稿を後からどのように利用するかが問題になります。

特にgiobai事件が示すように、広告として作ったインフルエンサー投稿を、自社サイトでは第三者の自然な口コミのように見せることは危険です。SNS運用担当者だけでなく、LP制作、EC、広報、広告代理店を含めた横断的な表示管理が必要です。

参考資料

消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing

消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing

消費者庁「SNOWと称するアプリケーションの利用サービスの提供事業者2社に対する措置命令」(2026年8月6日):https://www.caa.go.jp/notice/entry/047140/

消費者庁「株式会社giobaiに対する景品表示法に基づく措置命令」(2026年10月20日):https://www.caa.go.jp/notice/entry/047830/


※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別案件についての法律意見を提供するものではありません。

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